医療費控除と高額医療費制度について 2022.6.1

医療費控除と高額医療費制度について

医療費控除

一定の額の医療費(医療費控除対象の医療費)を支払ったとき、確定申告を行うことで所得税及び復興特別所得税が還付される場合があります。
・本人や本人と生計を一にする配偶者その他親族のために支払った医療費があるときは、下記の算式によって計算した金額が医療費控除として所得金額から差し引かれます。
・1月1日から12月31日までに実際に支払った医療費に限って控除の対象となります。未払となっている医療費は、実際に支払った年の控除対象となります。
・通常の医療費控除の適用を受けることを選択した方は、セルフメディケーション税制を受けることはできません。


(参照: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/04_1.htm)

セルフメディケーション税制

特定の医薬品を購入したときは、確定申告を行うことで所得税及び復興特別所得税が還付される場合があります。
・健康の保持増進及び疾病の予防への取組として、一定の取組を行っており、平成29年1月1日から令和3年12月31日までの間に、本人や本人と生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った特定一般用医薬品等購入費があるときは、下記の算式によって計算した金額が医療費控除の特例の対象となる金額として所得金額から差し引かれます。
・その年の1月1日から12月31日までに実際に支払った特定一般用医薬品等購入費に限って控除の対象となります。
・セルフメディケーション税制の適用を受けることを選択した方は、通常の医療費控除を受けることはできません。
 なお、通常の医療費控除の適用を受けることを選択した場合において、支払った特定一般用医薬品等購入費が治療や療養に必要な医薬品の購入対価に当たるときは、これを通常の医療費控除の対象となる医療費に含めて控除額の計算をします。


(参照: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/04_1.htm#selfmed)

高額医療費制度

医療機関や薬局の窓口で支払った保険適用医療費の額(※1)が、1カ月(月の初めから終わりまで)で上限額(※2)を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。
(※1)入院時の食費負担や差額ベッド代等は含みません。
(※2)毎月の上限額は、加入者が70歳以上か70歳以下かどうか、加入者の所得水準がど
のくらいかによって分けられます。また、70歳以上の方には、外来だけの上限額も
設けられています。
負担額の上限についての詳細は、以下の厚生労働省HPもしくはご加入の公的保険者険等にてご確認ください。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html)

この制度は、通常であれば自己負担額が高額になった場合、自己負担限度額を超えた分が、後で払い戻される制度です。つまり、まずは高額な医療費の自己負担額を支払い、かつ公的保険者に申請・請求(高額医療費支給申請書の提出)を行うことで受けられる制度です。
また、払戻は診療を受けた医療機関から提出される診療報酬明細の審査を完了後となるため、診療を受けた月から3カ月以上かかることがあります。払戻まで時間を要するため、医療費の支払いに充てる資金が家計を圧迫しますが、高額医療費支給見込額の8割相当額を無利子で貸付する「高額医療費貸付制度」(※3)もあります。
(※3)高額医療費貸付制度については、加入健康保険等にお問い合わせください。

限度額適用認定

医療費が高額になりそうなとき(例えば来月より入院の予定がある等の場合)は、限度額適用認定証を利用する方法もあります。
前述の通り、医療機関等の窓口での保険自己負担額が高額となり、あとから申請することにより、自己負担限度額を超えた額について、高額療養費制度を利用した場合は払い戻されますが、この支払いは大きな負担になります。
そういった場合には、事前申請して限度額認定を受けることで、「限度額適用認定証」が発行され、保険証と併せて医療機関等の窓口(※4)に、その診療を受ける最初に提示するとで、1ヵ月 (1日から月末まで)の窓口での支払いが自己負担限度額まで(※5)となります。つまり後で請求するのではなく、そもそも限度額までしか支払う必要がなくなるものです。
(※4)保険医療機関(入院・外来別)、保険薬局等それぞれでの取扱いとなります。
(※5)同月に入院や外来など複数受診がある場合は、高額療養費の申請が必要となること
があります。また、高額医療費制度同様、保険外負担分(差額ベッド代など)や、
入院時の食事負担額等の自由診療は対象外となります。

医療費控除と高額医療費制度の併用

高額療養費制度と医療費控除は、どちらも高額な医療費を支払ったときに使える制度です。そして、この2つの制度は併用して受けることができます。
ただし、高額療養費を申請して支給された金額は、上記の医療費控除の計算式のうち保険金などで補填された金額に該当します。つまり、併用する場合は高額療養費支給額(もらった金額)を差し引く必要があります。そのため、支払った負担総額ではなく、医療費を支払って申請支給された額を除いた金額となります(限度額適用認定の場合を除く)。
併用する場合、まず診療を受けその金額が高額である場合、高額医療費制度の申請を行います。審査が完了後、3カ月ほどで高額医療費制度支給額が支払われます。そして、その年度の確定申告にて医療費控除の申告を行うこととなります。
では、高額療養費の支給タイミングにより、年をまたいで支給された場合はどうでしょうか。その場合でも、医療費を支払った年の確定申告で医療費控除の保険で補填された金額として差引く必要があります。
年度末の11月分や12月分で高額療養費申請をした場合、確定申告期限(通常翌年3/15)までに支給額が確定しないこともあり得ます。こういった場合は、見込みの給付額で確定申告を行い、実際の額と相違があれば、確定申告をやり直す等の必要があります。修正申告や更正の請求などで対応する必要があることもあります。
なお、医療費控除の還付申告は確定申告を行った年の翌年1月1日から5年間、高額療養費の申請は、診療を受けた月の翌月初日から2年間です。
どちらも申告・申請を行わなければ、利用できないものですのでご注意ください。

最後に

年間の医療費が高額な方や高額医療費制度の利用要件を満たす方は、控除や制度を活用することで医療費の家計圧迫を抑えることができます。保険適用範囲など一部拡充(※6)されていることもありますので、高額医療費制度の要件を満たし、また、医療費控除の申告を行う機会が増えるかもしれません。
申告、各制度を利用する場合には、医療機関窓口、税理士等の専門家に相談、確認して頂くことをお勧め致します。
(※6)例:令和4年4月から体外受精の不妊治療について、一部保険適用となっておりま
す。保険適用とはいえ、自己負担額は高額になることが多く、高額医療費制度、
限度額適用認定が利用できるものもあります。

【参考】国税庁、厚生労働省、協会けんぽ

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このコラムの執筆者:松村 隆史