コロナウイルス感染症から考える事業継続計画 2021.10.11

コロナウイルス感染症から考える事業継続計画

コロナウイルス感染症の報告が2019年の年末にあってから、もう2年近く、世界中がコロナに明け暮れています。新規感染者数の激減?など、一筋の灯りも見えたような感じもありますが、冬場に向け予断を許さない状況が続きます。
来年度の事業計画や予算編成に向け、お話を伺うなかでも、どの医療機関の理事長、あるいは事務長とお話しても、「今後コロナの影響がどうなるかわからない」という意見がほとんどです。第6波が来て緊急事態宣言でも出たら外来がまた減ってしまう・・・従業員が疲弊して辞めてしまう・・・
 
 本年10月7日、8日と福島県で第25回日本医業経営コンサルタント学会が開催されました。福島開催ということもあり、テーマは「備えあれば憂いなし―地域包括ケアシステムを担保するBCPを目指す-」です。東日本大震災の教訓はもちろんですが、講演内容はやはり新型コロナウイルス感染症に対する事業継続に関するテーマが多いようです。
(残念ながらリアル開催が中止となり、収録オンデマンド配信となったので、まだ聴講できていませんが・・・)
 改めて、事業継続計画(Business Continuity Plan: 以下BCPとします)を見つめ直すきっかけとしたいと思います。

①BCP(事業継続計画)を利用する又は策定することを通じ課題を顕在化⇒事業計画に盛り込む
 近年の毎年のように起こる大規模災害、そして新型コロナウイルス感染症のクラスターの発生が起これば、医療機関の医療提供能力は低下することから、医療機関における事業継続計画(Business Continuity Plan: 以下BCPとします)の重要性は増していますが、BCPの策定率は平成30年12月1日時点で全病院の25.0%にとどまっています。(BCPの策定状況等調査の結果の概要(令和元年5月23日 第14回救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会資料6より) )
 いわゆる災害に対応するBCPと、コロナウイルス等、感染症に対応するBCPは、違うものかもしれませんが、 危機対応という意味では、コロナウイルス感染症も同じであり、そこでどう対応するか、ということを事前に準備しておくことを事業計画に盛り込み、準備をしておく良い機会かもしれません。東日本大震災などを経験し、危機対応能力を高めておいたことが事業の継続に寄与した例や、医療を提供する従業員を守るということを第一に考えて事業計画に盛り込み従業員の離職を防いでいる例などがあります。これを機会に、そうした目線での経営計画やBCP策定、つまり「常に有事」であると考えた事業計画を考えてみるのもいいのではないかと思っています。これが自院の課題あるいは強みを発見するきっかけとなるかもしれません。
 
②コロナウイルス感染症で気付かされた“地域”での貢献度の重要性
コロナウイルス感染症では、大幅な移動制限や、行政区分単位でのワクチン接種など、否が応でも都道府県、2次医療圏、市町村、などでの医療体制を意識されたでしょう。提供側から見ますと、”地域“でのマーケットを意識し、2次医療圏、あるいは高齢化が進むこれからはもっと小さい地域包括ケアシステム単位でポジショニングを明確にすることが今後ますます重要になるのではないでしょうか。

③BCPを考えることは従業員のことを考えるということ 地域を意識することは従業員を意識すること 
医療機関のBCPで意識することは、利用者(患者)の安全を確保し、必要なサービス(医療行為)を提供し続けることですが、そのために従業員をきちんと守る事、これがなければ医療の継続性はありません。コロナ感染症でも痛感するところであり、最前線で懸命に尽力する医療従事者には本当に頭が下がります。従業員を守るという明確なメッセージはこれからの事業計画に求められていると思います。従業員こそ多くがその“地域”に住み、医療サービスを受ける利用者でもあるのですから。

最後に
近年はVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)からVUCA(ブーカ)の時代と言われます。医療の世界でも、様々な要因が環境分析や自院の事業計画等に影響を及ぼしています。時代を乗り切るため、先を見据えた適切な事業計画によって、適切な医療を提供し続けることで地域に貢献されることを願っております。

植木隆之

2018年税理士法人名南経営入社。
薬学部を卒業後、製薬会社にて医薬情報担当者、医療系物流企業新規事業責任者、病院事務局を歴任、一貫して医療の最前線でキャリアを形成してきた。その間お付き合い頂いた調剤薬局、開業医、民間病院、地域中核病院から大学病院までの多くの医療従事者と培ってきた現場感覚を大切にしながら、薬剤師、中小企業診断士としての専門性を活かした論理的かつ実践的な提案を心がけている。