医療の未来予想図~2020年診療報酬改定から2035年問題、そして新型コロナウイルスとの闘い~ 2020.6.25

医療の未来予想図~2020年診療報酬改定から2035年問題、そして新型コロナウイルスとの闘い~
【まさに未来のことはだれもわからない

 

本稿は、だいぶ以前、まだコロナウイルスの話題のかけらも出ていないころには書き上げておりました。この数か月、目に見えない脅威があっという間に世間を駆け巡り、あっという間に世界が変わってしまいました。この状況を数か月前、だれが予想していたでしょうか。また、この脅威の中、懸命に医療の最前線で戦っておられる医療従事者の皆様には厚く敬意を表したいと思います。

 

【今後の日本の医療の姿は?

 

2018年の医療・介護同時改定から、あっという間、春には診療報酬の改定があり、もう次にくる介護報酬の改定の話題や、コロナウイルス等を含めた緊急時の医療体制の整備など、(以前の新型インフルエンザの時の教訓が生かされていない)等、医療現場の問題はますます難しく、複雑になっています。少し前の話ですが、そうした未来に対し、厚生労働省では2015年に「保健医療2035」策定懇談会が設置され、提言書が纏められました。いわゆる2035年問題です。

コロナウイルスまでは予想されていないですが、15年後の日本は?そして医療の姿はどのようになっているのでしょうか。

 

【未来の予想は当たるのか?

 

医療関連でなく、地域活性化、あるいは働き方改革という言葉が普及する前の、いわゆるダイバーシティ経営など、いろいろなジャンルのセミナーや講演会に参加してきました。

どの講演でも、必ず冒頭で出てくることが、日本のこれからの人口の推移の話です。

政治経済も、サイエンス・テクノロジーも15年、20年前、現在の状況を想像していた人は少ないでしょう。殆どの政治評論家はトランプ大統領誕生を予想していなかったし、もちろんコロナウイルスの世界大流行などだれも想定していませんでした。

ただひとつ、予想が外れない見通しがあるそうです。それは人口動態だそうです。これだけは全くの予想通りに推移しており、国も15年、20年後の日本の人口の推移だけは確実に分かっている訳です。

いわゆる「少子・高齢化」「人口減少問題」が、すべての国の施策に影響を及ぼしています。ここでは医療の分野に限りますが、労働人口の減少(特に介護分野等)が確実なので、「働き方改革」が必要ですし、医療や介護・年金等は給付と負担の問題(支え手の減少)を解消するために高齢者層へも負担増の話題が出てきています。薬価はますます引き下げ圧力が強まり、同時に減薬への取組み(いわゆるポリファーマシーへの取組み)やフォーミュラリー(科学的根拠に基づいた薬剤選択のルール策定)への取組みなども強化されるでしょう。病床のダウンサイジング議論等(地域医療構想の実現)もまったなし、という状況です。

コロナウイルスによる接触抑制により、注目されたオンライン診療等も一気に普及してくるかもしれません(医療の偏在問題の解決の1つとなるかもしれません)。

 

【では 日本の医療の未来は暗いのか?

 

人口減少といっても、高齢者人口はしばらく減少せず、横ばいに推移するそうです。

ただ、求められる医療は変化していくでしょう。いわゆる「治す」医療だけでなく、

「治して・地域でフォローする」というような医療が求められるでしょう。いわゆる地域包括ケアの実践です。介護の分野はまだ成長の余地があるようです。だから医療機関様に介護事業に参入して下さいということではなく、介護事業者との連携を強め、普段介護サービスを利用されている在宅の高齢者の状態悪化時(発熱や肺炎等)の入院を受ける等のサブアキュート的な役割などが拡大しそうです。医・介連携は必須になるでしょう。

コロナウイルス感染者のトリアージにおいても、明らかに重症な方はICU等に入院するとして、その手前や高リスクの方への対応(受け皿)が課題となりました。このサブアキュートの役割は一つの重要な医療機関の役割となるような予感がします。

「働き方改革」においても、多職種連携や「専従・専任」要件緩和によるタスク・シェア/シフト、「院内の労務管理・労働環境改善のためのマネジメントの実践」が求められるような議論がされていますので、より自院のリソースを有効に配分する知恵が必要になるのではないでしょうか。

いわゆる2035年問題だけでなく、新たに加わった、With コロナの時代、そしてPostコロナの時代に、このピンチが医療業界のイノベーションが起きるチャンスとなることを期待しています。

  • 病院・診療所・介護施設の経営変革をここから

植木隆之

2018年税理士法人名南経営入社。
薬学部を卒業後、製薬会社にて医薬情報担当者、医療系物流企業新規事業責任者、病院事務局を歴任、一貫して医療の最前線でキャリアを形成してきた。その間お付き合い頂いた調剤薬局、開業医、民間病院、地域中核病院から大学病院までの多くの医療従事者と培ってきた現場感覚を大切にしながら、薬剤師、中小企業診断士としての専門性を活かした論理的かつ実践的な提案を心がけている。