地域包括支援センターが行う事業の委託に係る消費税の取扱い 2019.4.11

地域包括支援センターが行う事業の委託に係る消費税の取扱い

社会福祉法人では、市町村から委託を受け、地域包括支援センターを設置し事業を実施することがあります。その場合の委託金に係る消費税の取扱いについて解説いたします。

1.地域包括支援センターの目的

地域包括支援センター(以下「センター」という。)は、地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、地域住民の保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的として、包括的支援事業等を地域において一体的に実施する役割を担う中核的機関として設置されるものです(介護保険法(平成9年法律第123 号。以下「法」という。)第115 条の46 第1項)。

2.設置主体

センターは、市町村(特別区、一部事務組合、広域連合等を含む。以下同じ。)が設置できることとされています。また、法第115 条の46 第1項に規定する包括的支援事業の実施の委託を受けた者も包括的支援事業等を実施するためにセンターを設置できることとされています。
包括的支援事業の委託を受けることができる者は、包括的支援事業を適切、公正、中立かつ効率的に実施することができる法人であって、老人介護支援センター(在宅介護支援センター)の設置者、地方自治法に基づく一部事務組合又は広域連合を組織する市町村、医療法人、社会福祉法人、包括的支援事業を実施することを目的として設置された公益法人又はNPO法人その他市町村が適当と認めるものとされています(介護保険法施行規則(平成11 年厚生省令第36 号。以下「施行規則」という。)第140 条の67)。

3.事業内容

センターの事業内容は次の(1)~(5)が挙げられています。
(1) 包括的支援事業
センターは、地域住民の保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援するため、以下の①から③の業務のほか、第1号介護予防支援事業(法第115 条の45 第1項第1号ニ(居宅要支援被保険者に係るものを除く。))を一体的に実施することとなっています。
① 総合相談支援業務(法第115 条の45 第2項第1号)
② 権利擁護業務(法第115 条の45 第2項第2号)
③ 包括的・継続的ケアマネジメント支援業務(法第115 条の45 第2項第3号)
また、センターは、これらの業務を地域において一体的に実施する役割を担う中核的拠点として、設置されるものであり、センターの運営に当たっては、それぞれの業務の有する機能の連携が重要であることから、市町村がこれらの業務の実施を委託する場合には、一括して委託しなければなりません(法第115 条の47 第2項)。
ただし、センターが包括的支援事業の3つの業務及び第1号介護予防支援事業に一体的に取り組むことを前提として、地域の住民の利便を考慮し、地域の住民に身近なところで相談を受け付け、センターにつなぐための窓口(ブランチ)を設けることは可能であり、この場合、センターの運営費の一部を協力費としてブランチに支出することは可能です。
また、これらの業務とは別に、市町村が取り組む以下の④から⑥の事業の全部又はその一部についてもセンターに委託することが可能となっています。(法第115 条の47 第1項)
④ 在宅医療・介護連携推進事業(法第115 条の45 第2項第4号)
⑤ 生活支援体制整備事業(法第115 条の45 第2項第5号)
⑥ 認知症総合支援事業(法第115 条の45 第2項第6号)
(2) 多職種協働による地域包括支援ネットワークの構築
(3) 地域ケア会議の実施
(4) 指定介護予防支援
(5) その他
センターは、(1)から(4)までに掲げる業務を実施するほか、①第一号介護予防支援事業(居宅要支援被保険者に係るものに限る。)、②一般介護予防事業、③法第115 条の45 第3項に規定する任意事業の委託を受けることができることとされています。(法第115 条の46 第1項及び施行規則第140 条の64)

4.消費税の取扱い

 消費税基本通達では、下記の記載となっています。

6-7-10 市町村が包括的支援事業(介護保険法第115条の46第1項《地域包括支援センター》に規定する包括的支援事業をいう。
以下6710において同じ。)を委託した場合の取扱いは、次のとおりとなる。
(1) 老人介護支援センターの設置者である法人に委託した場合
 老人介護支援センター(老人福祉法第20条の7の2第1項《老人介護支援センター》に規定する老人介護支援センターをいう。以下6-7-10において同じ。)の設置者である法人が包括的支援事業として行う資産の譲渡等は、老人介護支援センターを経営する事業として行う資産の譲渡等として法別表第一第7号ロ《社会福祉事業等に係る資産の譲渡等》に規定する社会福祉事業として行われる資産の譲渡等に該当し、非課税となる。
(2) (1)以外の法人に委託した場合
 (1)以外の法人が包括的支援事業として行う資産の譲渡等が、平成18年厚生労働省告示第311号「消費税法施行令第14条の3第5号の規定に基づき厚生労働大臣が指定する資産の譲渡等」に規定する事業として行われる資産の譲渡等に該当するときは、令第14条の3第5号《社会福祉事業等として行われる資産の譲渡等に類するものの範囲》の規定により、非課税となる。

また、平成18年厚生労働省告示第311号は、下記の通りです。

消費税法施行令第十四条の三第五号の規定に基づき厚生労働大臣が指定する資産の譲渡等
(平成十八年三月三十一日)(厚生労働省告示第三百十一号)
消費税法施行令(昭和六十三年政令第三百六十号)第十四条の三第五号の規定に基づき、厚生労働大臣が指定する資産の譲渡等を次のように定め、平成十八年四月一日から適用する。
消費税法施行令第十四条の三第五号の規定に基づき厚生労働大臣が指定する資産の譲渡等
次に掲げる事業として行われる資産の譲渡等(消費税法(昭和六十三年法律第百八号)別表第一第七号ロに掲げるものを除く。)
一 地域の老人の福祉に関する各般の問題につき、老人、その者を現に養護する者(以下「養護者」という。)、地域住民その他の者からの相談に応じ、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第二十四条第二項に規定する介護給付等対象サービス(以下「介護給付等対象サービス」という。)その他の保健医療サービス又は福祉サービス、権利擁護のための必要な援助等の利用に必要な助言を行う事業
二 地域における保健医療、福祉の関係者その他の者との連携体制の構築及びその連携体制の活用、居宅への訪問等の方法による主として居宅において介護を受ける老人(以下「介護を受ける老人」という。)に係る状況の把握を行う事業
三 介護給付等対象サービスその他の保健医療サービス又は福祉サービス、権利擁護のための必要な援助等を利用できるよう、介護を受ける老人又は養護者と市町村、老人居宅生活支援事業を行う者、老人福祉施設、医療施設、老人クラブその他老人の福祉を増進することを目的とする事業を行う者等との連絡調整を行う事業
四 その他介護を受ける老人又は養護者に必要な援助として行う次に掲げる事業
イ 介護を受ける老人が要介護状態又は要支援状態(以下「要介護状態等」という。)となることを予防するため、その心身の状況、その置かれている環境その他の状況に応じて、その選択に基づき、介護予防に関する事業(介護保険法第十八条第二号に規定する予防給付に係るものを除く。)その他の適切な事業が包括的かつ効率的に提供されるよう必要な援助を行う事業(介護保険法第百十五条の四十五第一項第一号に規定する介護予防・日常生活支援総合事業に係る事業を除く。)
ロ 介護保険法第七条第五項に規定する介護支援専門員への支援、介護給付等対象サービスその他の保健医療サービス又は福祉サービス等の連携体制の確保等により、介護を受ける老人が地域において自立した日常生活を営むことができるよう、包括的かつ継続的な支援を行う事業
ハ 医療に関する専門的知識を有する者が、介護サービス事業者、居宅における医療を提供する医療機関その他の関係者の連携を推進するものとして、介護保険法施行規則(平成十一年厚生省令第三十六号)第百四十条の六十二の八各号に掲げる事業を行う事業(ロに掲げる事業を除く。)
ニ 介護を受ける老人の地域における自立した日常生活の支援及び要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止に係る体制の整備その他のこれらを促進する事業
ホ 保健医療及び福祉に関する専門的知識を有する者による認知症の早期における症状の悪化の防止のための支援その他の認知症である又はその疑いのある介護を受ける老人に対する総合的な支援を行う事業

 消費税の課税・非課税の判定を行う際には、市町村から委託を受けた事業を上記に当てはめてご検討ください。

※いずれも平成31年3月時点の法令に基づき記載しております。

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山本はるか

税理士法人名南経営 会計部 マネージャー

2008年税理士法人名南経営に入社。 医療法人、社会福祉法人、社団・財団法人、NPO法人などのパブリックセクターの会計・税務顧問業務に従事。また、上記の会計・税務顧問業務以外にも、公益法人改革コンサルティングや社会福祉法人の新会計基準移行、法改正コンサルティングにも注力している。社会福祉法人向けの講演は多数あり、実務経験に基づいた専門性の高い講演は非常に好評。会計事務所に対してはセミナーDVDも販売されている。