相続関係の民法等の一部改正 2018.8.17

相続関係の民法等の一部改正

平成30年7月6日に改正民法等が成立しました。相続関係の民法の大幅な見直しは、昭和55年以来の38年ぶりのことです。
高齢化社会の進行を背景とし、「配偶者の居住権の保護するための方策」・「遺産分割に関する見直し等
・「遺言制度に関する見直し」・「遺留分制度に関する見直し」・「相続の効力等に関する見直し」・「相続人以外の者の貢献を考慮するための方策」の6つの柱から成る内容となっております。
ここでは、改正民法等の主な内容とそのポイントに関する説明をさせて頂きます。

1 配偶者居住権の創設
配偶者の生活を短期的及び長期的に保護するために、配偶者居住権が創設されました。
配偶者居住権とは、被相続人の財産となっていた建物に相続開始の時に居住の用に供していた場合において、原則その配偶者が亡くなるまでの期間、その居住用建物の全部について無償で使用及び収益をする権利をいいます。
相続開始以後も、配偶者は居住の用に供していた建物での生活を継続することができ、結果として配偶者の生活を保護することができます。
2 持戻し免除の意思表示の推定規定
婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人から、他の一方に対し、居住の用に供していた建物又はその敷地を生前贈与又は遺贈したときは、原則として特別受益を受けたものとして取り扱う必要がなくなり、遺産分割の計算対象と見なさないこととなりました。
3 預貯金の仮払い制度の創設
当面の生活費や葬儀費用等の支払のために、遺産分割前であっても、払戻しを可能とする預貯金の仮払い制度が創設されました。
払戻し可能金額は、相続開始時の預貯金債権金額の3分の1に法定相続分を乗じた金額となります。(但し、種々の事情を考慮し、上限額は法務省令で定める金額となります。)
4 自筆証書遺言の方式緩和・保管制度の創設
自筆証書遺言に相続財産目録を添付する場合には、その財産目録については、自筆であることを要しないこととなりました。
遺言者は、法務局に対して、自筆証書遺言書の保管の申請、当該自筆証書遺言書の返還又は閲覧の請求をすることができることとなりました。加えて、遺言者に係る相続が開始した場合、法務局に保管された自筆証書遺言書に関しては、検認手続を要しないこととなりました。

 

5 遺留分侵害額請求権の行使
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者又は受贈者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができることとなりました。一方、裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、同金銭の全部又は一部の支払につき、相当の期限を許与することができることとなりました。
6 相続による権利の承継に関する規律
遺産分割によるものか否かに関わらず、法定相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないこととなりました。
7 特別寄与料の支払請求制度の創設
相続人以外の親族が被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加に一定の貢献をした場合には、相続開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭の支払を請求することができることとなりました。

上記①から⑦までの改正は、平成30年7月中旬に改正民法等が公布された後2年以内に順次施行されていくこととなります。それぞれの改正の変更点や施行時期等を十分に踏まえた上で、我々に身近となった相続に対する適切な対応を、専門家と共に検討していくことをお勧め致します。

佐藤易秀

税理士法人名南経営 会計部 マネージャー

1999年税理士法人名南経営に入社。
税理士として、病院・クリニック・社会福祉法人・公益法人等、幅広い種類の法人・個人の会計・税務顧問業務を中心にクライアントの個別のニーズに柔軟に対応、支援を行っている。上記の税務顧問業務から付随的に発生した多方面にわたる各種コンサルティング業務へも従事している。その他医療機関向けの税制改正のセミナーを多数行っている。