関連者間取引に係る書類の整理保存の特例について 2026.7.14

関連者間取引に係る書類の整理保存の特例について

令和8年度税制改正では、いわゆるグループ内取引に係る書類保存の特例が創設され、関連者間取引に関する書類の整理保存義務が強化されました。
本特例は、グループ内取引では当事者間の関係から取引に関する詳細な資料が作成されない、あるいは取引情報の記載等が十分でない場合があることを踏まえて創設されました。
具体的には、契約書等に対価の額の明細などの記載がない場合には、その不足事項(特定事項)を明らかにする「特定事項記載書類」の取得又は作成・保存が必要となりました(法人税法施行規則59の2)。
医療機関様の場合、「関連者」に該当するMS法人との取引が対象となることがあります。本特例により、従来の契約書・請求書等のみでは書類不備とみなされるリスクがあることも考えられるため、早急に現在の書類の確認、整備が必要となりますので、今回は本特例についてご説明します。

関連者とは

本特例の対象となる「関連者」とは、法人税法上の定義に基づく以下のような法人間の関係を指します。
・発行済株式等の50%以上を直接または間接に保有している関係
・同一の者が複数の法人の株式等の50%以上を保有し、実質的に支配している関係
・役員の兼務や資金調達の依存関係など、株式保有以外の特定事実により一方が他方の事業方針を実質的に決定できる関係

適用開始時期

本特例は令和8年4月1日以後開始事業年度から適用するとされています。
そのため、本コラムの掲載時には、既に3月~6月決算の医療機関様では適用済みであり、早急に対応が必要となる場合があります。

対象取引(関連者間取引)

法人税法施行規則59の2にて定められている本特例の対象取引は以下の通りです。
なお、仕入等の原価に相当する取引は対象外であり、販売費、一般管理費その他の費用に該当する取引が対象となります。
①工業所有権等の譲渡又は貸付
②関連者から受ける下記の役務提供
(1)内国法人(子会社等)が費用負担することを定めている契約等に基づき行う次の事業活動
イ 親会社等が有する経営資源を活用して行われる研究開発、広告宣伝など
ロ 親会社等のシステムを子会社等に使用させる行為や、そのシステムの維持及び管理など
(2)技術指導、マーケティング支援、会計・税務・法務支援など
(3)上記(1)(2)の役務提供に類するもの

特定事項記載書類の記載内容

今回は役務の提供に係る特定事項記載書類の記載について紹介させていただきます。
役務の提供に関しては、次の3点の記載が必要です。
①役務の提供の明細及び内容……提供される役務の内容や範囲等を把握できるもの
②対価の額の明細……何の対価として支払う金額であるか等を把握できるもの
③対価の額の計算の方法……算定根拠(計算式や計算手順等)を確認できるもの
ただし、記載内容の程度については法令上明確な基準はなく、個別具体的に実態に即した判断が求められます。
そのため、第三者が取引内容や価格算定の合理性を理解できる書類の作成と保存が重要となります。

特定事項記載書類不備のリスク

特定事項記載書類が保存されていなかった場合、青色申告法人では実地調査の結果次第では青色申告の取消事由に該当する可能性があります。
青色申告の取消しは以下のような特例等に影響を及ぼします。
・青色欠損金の繰越控除(10年間)
・40万円未満の固定資産に対する少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
・その他優遇税制(税額控除や特別償却等)

これらは、法人運営に大きなダメージをもたらすため、書類の整備は必須となります。

まとめ

本特例の創設により、関連者間取引のある医療機関様は、契約書や請求書のみでなく、対価の明細や算定根拠を示す書類の整備が不可欠となりました。
また、本特例の対象外であっても関連者間取引は税務上注視されるポイントであるため、全ての関連者間取引について適正な書類の整理保存を推進することが重要ではないでしょうか。

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