診療報酬改定後に見直したい医療機関の収支構造 2026.4.24

診療報酬改定後に見直したい医療機関の収支構造

― 院長が押さえておきたい会計上のチェックポイント ―
診療報酬改定が行われるたびに、院長先生からよくいただくご相談があります。
それが、
「結局、うちの経営にはどんな影響があるのでしょうか?」
というものです。
点数改定や新設・見直しされた加算の情報は目にしていても、
それが自院の売上や利益、さらに今後の経営判断にどのようにつながるのかまでは、意外と分かりにくいものではないでしょうか。今回は、診療報酬改定後に一度立ち止まって確認しておきたい
「医療機関の収支構造」について、会計の視点から整理します。

1.診療報酬改定=売上がそのまま増減する、とは限らない

診療報酬改定というと、
「今回はプラス改定なのか、マイナス改定なのか」
といった全体的な話に目が向きがちです。
しかし実際には、個々の医療機関への影響は決して一律ではありません。
例えば、
・算定している加算の内容が見直された
・主な診療内容の評価が変わった
・算定要件が厳しくなった、あるいは緩和された

こうした違いによって、同じ診療科であっても、売上の動きに差が出ることがあります。
そのため、「改定=売上が増える(または減る)」
と感覚的に判断するのではなく、改定前後で月次の医業収益がどのように推移しているかを、まずは数字で確認することが重要です。

2.見落とされがちな費用構造、とくに人件費

診療報酬改定後の経営を考えるうえで、売上と同時に、あるいはそれ以上に注意したいのが費用の動きです。
とくに近年は、ベースアップ評価料の算定や賃上げ対応をきっかけとして、
スタッフの処遇改善に取り組まれている医療機関も多いのではないでしょうか。
評価料の算定によって一定の収入増が見込める一方で、
実際の賃上げ幅や対象スタッフの拡大により、
評価料による増収以上に人件費全体が増加しているケースも見られます。
制度導入当初は収支バランスが取れていたものの、
その後の昇給や採用条件の見直しによって、
徐々に人件費負担が重くなっている、というご相談も少なくありません。

3.黒字なのに、思ったほどお金が残らない理由

院長先生からよく伺うもう一つの疑問が、「決算は黒字なのに、手元に思ったほどお金が残っていない」
というお話です。
診療報酬改定後は、とくに医療DX対応をきっかけとして、・オンライン資格確認への対応・電子処方箋導入に伴うシステム改修・既存レセコンや電子カルテの更新といった設備・システム投資が発生している医療機関も多く見られます。
これらは中長期的には必要な投資である一方、資金の支出は先に発生します。そのため、補助金の活用を予定している場合でも、入金までにタイムラグが生じ、一時的に資金残高が減少するケースもあります。
このように、会計上は利益が出ているにもかかわらず、実際の資金が減っている、という「利益」と「キャッシュ」のズレは、改定対応をきっかけに顕在化しやすい点の一つです。診療報酬改定後は、損益だけでなく、資金の動きにも目を向けておくことが、より重要になってきます。

4.改定後に最低限確認しておきたいポイント

診療報酬改定後、まず確認しておきたいポイントは次の3つです。
・医業収益が月次でどのように推移しているか
・人件費や外注費が増えすぎていないか
・利益と実際の資金残高に大きなズレが生じていないか

これらを早めに把握しておくことで、必要以上に不安を感じることなく、次の経営判断につなげやすくなります。

5.会計の視点でできる医療機関サポート

診療報酬改定の影響は、医療機関の規模や診療内容、組織体制によってさまざまです。そのため、自院の数字を「自院なりに」読み解くことが重要になります。
当事務所では、
・月次試算表をもとにした収支バランスの確認
・人件費を含めたコスト構造の整理
・将来を見据えた資金計画や設備投資の検討

などを通じて、院長先生が感覚ではなく、数字で経営判断ができる状態を整えるお手伝いをしています。
診療報酬改定をきっかけに、「今の数字の見方で本当に大丈夫だろうか?」
と感じられた場合は、一度、現状を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の対応については、医療機関ごとの状況に応じた確認が必要となります。詳しくは個別にご相談ください。

このコラムの執筆者

岩村 和樹

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