令和7年4月1日改正 新公益法人会計基準の概要と実務対応 2025.9.16

令和7年4月1日、公益法人会計基準の改正が施行されることとなりました。今回、公益法人制度改革として、会計基準以外の項目についても 18 年ぶりに改正されています。本稿では、新公益法人会計基準の主な改正内容と、公益法人の実務に与える影響について解説します。
1. 改正の背景
近年、公益法人を取り巻く環境は大きく変化しています。社会的な要請の高まりや、ガバナンス強化、会計情報の信頼性向上が求められている中、現行基準の見直しが進められてきました。今回の会計基準の改正は「本表は簡素でわかりやすく、詳細情報は注記で」という考え方に基づいています。
これまでの公益法人会計基準は、公益法人特有の会計処理の考え方が多々あり、一定の知識がないとわかりづらいものとなっていたことや、公益法人の活動の多様化に伴って資金提供者等のステークホルダーが多様化し、より簡素でわかりやすい財務諸表を開示することが求められてきているためです。
2. 主な改正ポイント
新公益法人会計基準(以下、新会計基準といいます。) の主な改正点は以下の通りです。
(1) 財務諸表本表の様式変更
【貸借対照表】
改正前の会計基準においては、固定資産の部を基本財産、特定資産、その他の固定資産の3区分で表示していましたが、新会計基準においてはその区分を削除し、有形固定資産、無形固定資産、その他の固定資産として表示します。
正味財産の部については純資産の部に変更され、改正前は基金、指定正味財産、一般正味財産の3区分でしたが、新会計基準においては基金、指定純資産、一般純資産、その他有価証券評価差額金の4区分で表示します。
上記の変更により、よりなじみのある企業会計原則に近づくものになっています。
【活動計算書(正味財産増減計算書)】
改正前の会計基準において「正味財産増減計算書」として作成されてきたものは「活動計算書」という名称に変更されます。また、これまで一般正味財産と指定正味財産を区分してその増減を表示していましたが、新会計基準では純資産全体の増減を経常活動とその他の活動に区分して表示することとなります。
活動計算書についても簡素化されたことで理解しやすいものとなっています。
(2) 注記内容の拡充
新会計基準では、上記 (1) の通り本表が簡素化された分、注記で開示すべき内容が拡充されています。
貸借対照表においては、基本財産、特定資産の内訳を注記において記載し、使途拘束資産や指定純資産の内訳を表示します。
活動計算書においては、財源区分別内訳、会計・事業区分別内訳、事業費・管理費の形態別区分を表示します。
3. 実務に与える影響
新会計基準は令和7年4月1日以降に開始する事業年度から適用されますが、3年間の経過措置期間が設けられており、すべての公益法人が新会計基準への移行を求められるのは令和10年4月1日以降に開始する事業年度からとなっています。この経過措置期間中にどう対応していくべきか各法人内で検討していく必要があります。
※内容は令和7年4月時点の情報に基づいています。今後、詳細な運用指針やQ&Aが公表される可能性がありますので、最新情報の確認をお願いいたします。