訪問看護ステーションを開設する際のポイント 2025.6.26

訪問看護ステーションを開設する際のポイント

はじめに

私は理学療法士として、総合病院に新卒で就職し、その後、訪問看護ステーションに勤務しておりました。勤務先のステーションには開設時から関わり、開設初月には一人で約 40 件の居宅介護支援事業所と包括支援センターへ営業を行い、ポスティングでは 13,000枚を配布しました。その結果、初月の実利用者数は3名でした。
その後も地道な営業活動を続け、開設12ヶ月で実利用者数は40名、24ヶ月では78名まで増加しました。営業活動はもちろん重要ですが、振り返ると、「事業が軌道に乗ったポイント」と、「こうしていればもっと早く軌道に乗ったかもしれない」と思うポイントがあります。
今回は、訪問看護の概要、現状、そして訪問看護ステーションを開設する際のポイントについて整理したいと思います。

訪問看護とは

訪問看護は、疾病又は負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にある者に対し、その者の居宅において看護師等が行う療養上の世話又は必要な診療の補助をいいます。
サービス提供は、病院・診療所と訪問看護ステーションの両方から行うことができます。
利用者は年齢や疾患、状態によって医療保険又は介護保険の適応となるが、介護保険の給付は医療保険の給付に優先することとしており、要介護被保険者等については、末期の悪性腫瘍、難病患者、急性増悪等による主治医の指示があった場合などに限り、医療保険の給付により訪問看護が行われます。(図表1)
(図表1)

訪問看護の現状(在宅療養者の急増と多様化、複雑化)

近年、在宅療養者は急増しており(図表2)、多様化・複雑化しています。また、重度の障がいのある小児や精神障がいがある在宅生活者、認知症の人など多様化してきていることも近年の特徴です。人生の最終段階を在宅で過ごすことを希望する利用者も増えています。さらに、単身世帯や高齢者世帯の増加、家族介護基盤が脆弱になっていることも加わり、複雑化した課題を有する利用者が少なくない状況です。
2024 年 4 月時点において、医療保険の訪問看護を提供するステーションは約 1 万 7,000 カ所、介護保険の訪問看護ステーションを提供するステーションは約 1 万 4,700 カ所あり、今後も需要の増加が見込まれます。(図表3)

(図表2)

(図表3)

訪問看護ステーションを開設する際のポイント

①経験豊富な看護師(管理者)・リハ職の採用
訪問看護の運営には、制度やルールに精通した管理者の存在が不可欠です。技術・知識だけでなく、介護保険制度や訪問看護の運用ルールを理解していることが重要です。
私の勤務先では、管理者の看護師が訪問看護経験者で、ケアマネジャーからの問い合わせにも的確に対応していました。
例えば「退院当日から訪問可能か?」という質問に対し、「翌日からしか訪問できない」と正しく説明できることで、信頼関係の構築に繋がりました。
また、リハビリ職においても、病院経験者であっても訪問看護は別物です。利用者との関係性や在宅での対応力が求められます。実際に、病院勤務 10 年のスタッフが訪問後に利用者から拒否されたことがあり、技術指導を経て再び信頼を得ることができました。
②訪問看護未経験者の採用と育成体制の整備
訪問看護経験者は限られているため、未経験者の採用と育成は不可欠です。特に「一人で訪問する不安」が大きいため、教育体制や同行訪問の仕組みが重要です。
私の勤務先では、病院勤務経験のある看護師が入職し、管理者と同行訪問を重ねながら独り立ちしました。オンライン教材の活用やカルテの事前確認など、自主的な学びも支援していました。
③365 日営業・24 時間対応体制の構築
医療機関との連携を強化するには、365 日営業・24 時間対応が求められます。私の勤務先では平日のみ定期訪問を行い、緊急時のみ土日祝対応でしたが、医療機関から「紹介できる患者がいない」と言われることもありました。
医療保険での訪問依頼(例:退院後 14 日間の毎日訪問)に対応できないと、介護保険での利用者が中心となり、看護師の訪問件数が伸び悩む傾向があります。
④在宅療養支援診療所(在支診)との連携
在支診は在宅医療に積極的で、訪問看護が必要な患者を多く抱えています。信頼関係を築ければ、継続的な紹介が期待できます。
私の勤務先では土日祝休みだったため、在支診との連携が難しく、紹介の機会を逃していました。営業活動だけでなく、体制整備が重要です。
⑤資金繰り計画の重要性
訪問看護ステーションの開設には、最低でも看護職員 2.5 名の配置が必要で、人件費が大きな負担となります。売上が損益分岐点を超えるまでのキャッシュアウトに耐えられる資金計画が不可欠です。
私の勤務先では、他の介護事業(デイサービス等)で黒字を出していたため、開設初期の赤字を乗り越えることができ、1年で損益分岐点を超えました。

最後に

訪問看護ステーションの開設は、地域の在宅医療を支える重要な役割を担います。事業の安定性を確保しながら、地域
に貢献できる訪問看護ステーションを目指しましょう。弊社では、訪問看護ステーションの開設支援・経営改善支援(期
間:3か月~6か月)を行っております。初回無料相談も承っておりますので、どうぞお気軽にお問合せください。

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水野 圭祐

2024 年税理士法人名南経営に入社。
大学卒業後、理学療法士として総合病院、デイサービス、訪問看護ステーションに勤務。入院から通所、在宅まで、シニアの生活を支える一連の流れを経験し、 幅広い現場での知見を深めてきました。 「自立したシニアを増やし、 家族みんなが笑顔になる社会をつくりたい」という想いから、医業経営コンサルティングの道へ。これまでの現場経験を活かし、日本各地の医療・介護事業者の支援を通じて、地域に根ざした持続可能なサービスづくりに貢献しています。