物価高騰による医療機関、介護施設等における食事代の引き上げと消費税の軽減税率等について 2024.9.13
昨今では物価高騰が著しく、食費、光熱費の増大等、消費者にはかなり厳しい状況ではない でしょうか。もちろん消費者側だけでなく、提供する側、つまり事業者側にも同じ事が言え ると思います。今回は、医療機関等の食事代の引き上げと消費税軽減税率の変更点等を説明 します。
1.医療機関等の入院時食事療養費の取り扱いについて
医療機関等の入院時食事療養費(収入)はこれまで約 30 年間、据え置かれてきました。し かし、物価高騰の影響により、給食材料費や調理費、光熱水費等の費用が増加している状況 です。 こういった状況を踏まえ、令和 6 年 6 月 1 日から食事療養費が 640 円から 670 円へ改定となりました。
医療機関等における入院食(病院食等)の消費税については、健康保険法等の規定に基づく 入院時食事療養費に係る病院食の提供は非課税とされています。
なお、患者の自己選択により、特別メニューの食事の提供を受けている場合に支払う特別の 料金については、非課税となりません。また、病室等で役務を伴う飲食料品の提供を行うこ とから、飲食料品の譲渡には該当せず、軽減税率の適用対象となりません。
その他、参考までに、医療機関に支払う入院患者の食事代は、いわゆる入院費用の一部であ り、入院の対価として支払われるものですので、通常必要なものは、所得税の確定申告にお ける医療費控除の対象となります。
(注) 病室で出前を取った場合、外食をした場合の食事代や、おやつ代など、病院から給付 される食事以外の食事の費用は、入院の対価には当たらないことから、医療費控除の対象と はなりません。
2.有料老人ホーム等特定施設の消費税軽減税率 8%が適用される食事代の引き上げについて
有料老人ホーム等特定の施設で提供される食事のうち一定のものについて、適用される消 費税軽減税率 8%の基準額も、上記と同様に令和 6 年 6 月 1 日から引き上げられています。
今回、軽減税率 8%が適用される金額基準について、1 食当たり税抜価格「640 円以下」だ
ったものが、令和6年 6 月 1 日から、「670 円以下」へと 30 円引き上げられました。
これに伴い、食事代の 1 日累計額、税抜価格「1,920 円まで」だったものが、「2,010 円まで」 へと引き上げられています。なお、あらかじめ書面により、累計額の対象となる食事を定め ることにより、日中のおやつ代を累計額から除くこともできます。
物価高騰で食事代が上がっている施設も多いと思われます。すでに改正は施行されています ので、まだ改正後での金額基準で算定されていない場合は、消費税率 8%の対象となる食事 代に変更がないかご確認ください。
関連資料: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0024003-094.pdf
今回は、物価高騰における医療機関等の食事代について説明しておりますが、物価高騰の影 響は食事代のみではありませんし、医療機関のみの問題でもありません。業種、個人、法人 問わず支出が増加しているのが現状であり、材料、資材、光熱費等さまざまな費用において、 経営状況に影響を及ぼしております。
このような状況下での対策として、仕入管理を徹底し、ロスを減らす等管理方法の見直しや 日々の節電努力や省エネ家電への買い替えなど光熱費の削減に取り組まれる医療機関等も 増えています。夏期・冬期それぞれ空調設備の点検・清掃、照明の間引き、使用していない エリアの消灯、古くなった寿命を迎える家電を順次、省エネ家電に買い替える取り組み等も 一定の効果は期待できます。また、物価高騰に対し、自治体によっては補助金事業の対象と なっていることもありますので、これらの活用も効果的です。
ご不明な点、ご相談、補助金の申請等、これら詳細につきましては、専門家へのご相談をお すすめします。
松村 隆史
2019年税理士法人名南経営に入社。 入社以前より個人・法人含め、病院、診療所、歯科医院等を主に担当しており、医療機関の新規開業、医療法人設立、会計、税務顧問業務に従事してきている。現在は、税務及び経営指導・相談業務を行う傍ら、診療所の開業支援業務を中心として、新規開業にも携わっている。