診療報酬改定とこれからの経営戦略について 2024.8.9

診療報酬改定とこれからの経営戦略について
令和 6 年 6 月より新しい診療報酬体系による請求が始まりました。 今回は診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の同時改定であり大規模な改定と なっておりますので、各医療機関におかれましてはその対応に追われたことと思います。
今回の改訂について個別具体的な論点につきましてはすでに様々な媒体において解説され ておりますので詳細は割愛させて頂きますが、筆者としてはさまざまな資料を確認し、お客 様やお付き合いのある業者の方々と意見交換していく中で大きく二つの特徴があると感じております。
一点目はこれまでの改定でも見受けられますが、医療費の予算が限られる中での資源の再分配という点です。こちらは日本がしばしば資本主義国家でありながら社会主義的と言 われるように様々な政策においてしばしば見受けられる傾向かと思います。 具体的には、これまで比較的利益が出るとされていた診療科に対して減算改定が行われ(特 定疾患管理料、短期滞在基本料、透析、在宅、精神科関連等)、その減算分を初再診料やベ ースアップ評価料などで全体的に分配したり、国として推し進めたい分野(DX や地域連携) に対して加算をつけたりというような改定となっています。
二点目は経営体力のない医療機関、介護施設様には厳しい改定も多く、開業抑制や廃業な どが起こりかねない可能性が高いという点です。具体的には電子カルテの標準化等国の推 し進める医療 DXに対応していくことができれば算定できる加算や、DX 対応すれば施設基 準をクリアしやすくなる点数が見受けられることなど国の方針に基づく設備投資に対応で きる経営資源のある医療機関等に比べ経営資源に乏しい医療機関等の方は対応が厳しくな っている状況となっております。これは中小企業庁が毎年公表している中小企業白書にお いても近年中堅企業化を求めて統廃合の促進を促すなど同様の論調が展開されており現在 の日本の政策の根幹に基づいているのではないかと考えられます。
今後の対策については今回の改定への対応ももちろん重要ですが、今後厳しい改定が起 こっても対応できるように備えていくことが重要になってくると思います。
実際すでに財務省は更なる医療費削減を求める資料を公表しており、今後も医療機関に とっては厳しい改定が続く可能性もあります。そのような外部環境においても揺らぐこと がない経営をしていくためにも、骨太で安定している経営状態を維持していくことが重要 になります。 そのためには自院の課題の洗い出しをし、生産性向上、経営体制のスリム化など経営改善し ていくことも重要になってきます。

自院の課題の洗い出しには各種経営指標の計算や予実管理なども大きなヒントとなります。 ぜひ顧問税理士やコンサルタントにも相談しながら経営課題を洗い出しより強固な経営体 制を構築されることを願っております。 もちろん名南コンサルティングネットワーク各社でもお手伝い可能ですのでお困りの医療 機関様はお気軽にお問合せ頂けますと幸いです。

  • 病院・診療所・介護施設の経営変革をここから

寺田将之

2018年税理士法人名南経営に入社。 診療所及び歯科診療所、調剤薬局等の会計・税務顧問業務に従事。 会計税務にとどまらず、中小企業診断士としての知見や実務経験に基づいた診断助言を行っている。 顧客の考えを整理し、様々な情報と組合せたうえでの最適な方法の提案には定評があり、 特に成長志向の高い顧客層からの支持を得ている また、近年は上記の会計・税務顧問業務以外にも、開業支援業務にも注力している。