所得税・個人住民税の 定額減税 2024.4.12

所得税・個人住民税の 定額減税

令和 5 年 12 月 22 日に令和 6 年度税制改正の大綱が閣議決定されました。
令和 6 年度税制改正の大綱の概要の冒頭では、「賃金上昇が物価高に追いついていない国民 の負担を緩和し、物価上昇を十分に超える持続的な賃上げが行われる経済の実現を目指す 観点から、所得税・個人住民税の定額減税の実施や、賃上げ促進税制の強化等を行う。・・・」 と述べられています。 今回は、物価高騰対策の一環として注目が集まっている所得税・個人住民税の定額減税につ いて説明していきます。

制度の概要

本制度は該当者1人につき、令和 6 年分の所得税と個人住民税を合わせて4万円が控除(減税)される制度です。

制度の詳細 【所得税】

令和 6 年分の所得税について、定額減税に係る額が控除(減税)されます。

(控除額)
1 本人 3万円
2 同一生計配偶者又は扶養親族(いずれも居住者に限る。) 1 人につき 3 万円

(要件)
令和 6 年分の所得税の納税者である居住者で、合計所得金額が 1,805 万円以下の場合に 限ります。
※「居住者」とは、国内に住所を有する個人又は現在まで引き続いて 1 年以上居所を有する個人をいいます。
※「合計所得金額」とは、以下の通りとなります。(令和 5 年分確定申告書等作成コーナーよくある質問より) 次の1と2の合計額に、退職所得金額、山林所得金額を加算した金額です。
※申告分離課税の所得がある場合には、それらの所得金額(長(短)期譲渡所得については特別控除前の金額)の合計額を加算した金額です。

1 事業所得、不動産所得、給与所得、総合課税の利子所得・配当所得・短期譲渡所得及び雑所得の合計額(損益通算後の金額)
2 総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額(損益通算後の金額)の 2 分の 1 の金額

(控除対象者の範囲)
令和 6 年 6 月 1 日現在、給与の支払者のもとで勤務している人のうち、給与等の源泉徴 収において源泉徴収税額表の甲欄が適用される居住者の人が対象となります。 ※この控除対象者の確認の時点においては、合計所得金額を勘案しませんので、合計所得

金額が 1,805 万円を超えると見込まれる基準日在職者に対しても控除を行います。

(同一生計配偶者及び扶養親族の範囲) 同一生計配偶者とは、控除対象者と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除く。) のうち、合計所得金額が 48 万円以下の人をいいます。 扶養親族とは、所得税法上の控除対象扶養親族だけではなく、16 歳未満の扶養親族も含 まれます。

(支給時期)
~給与所得者~
令和 6 年 6 月 1 日以後最初に支払う給与等に対する源泉徴収税額から税額を控除します。 控除しきれない部分の金額は、以降令和 6 年中に支払う給与等に対する源泉徴収税額か ら順次控除します。
~年金所得者~
令和 6 年 6 月 1 日以後最初に厚生労働大臣等から支払を受ける公的年金等(確定給付企 業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除く。)につき源泉徴収をされるべき所 得税の額について、給与所得者に係る特別控除の額の控除に準じた取扱いとなります。 ~事業所得者~
令和 6 年分の所得税に係る第 1 期分予定納税額(7 月)から本人分に係る特別控除の額に 相当する金額を控除します。特別控除の額に相当する金額のうち、第 1 期分予定納税額 から控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、第 2 期分予定納税額(11 月)から 控除します。

【住民税】
令和 6 年分の個人住民税について、納税義務者の所得割の額から定額による所得割の額 の特別控除を実施します。 ※寄附金税額控除(ふるさと納税)の限度額計算の基礎となる所得割は控除前の金額で計算することとなるのでふるさと納税の限度額への影響はございません。

(控除額)
1 本人 1万円
2 控除対象配偶者又は扶養親族(国外居住者を除く。) 1 人につき1万円

(要件)
令和 6 年分の個人住民税に係る合計所得金額が 1,805 万円以下の場合に限ります。

(支給時期)
~給与所得者~
特別徴収義務者は、令和 6 年 6 月に給与の支払をする際は特別徴収を行わず、特別控除 の額を控除した後の個人住民税の額の 11 分の 1 の額を令和 6 年 7 月から令和 7 年 5 月ま で、それぞれの給与の支払をする際毎月徴収します。
~年金所得者~
令和 6 年 10 月 1 日以後最初に厚生労働大臣等から支払を受ける公的年金等につき特別徴 収をされるべき個人住民税の額から特別控除の額に相当する金額(当該金額が各月分特 別徴収税額を超える場合には、当該各月分特別徴収税額に相当する金額)を控除されます。 特別控除の額に相当する金額のうち、上記及びここに定めるところにより控除をしても なお控除しきれない部分の金額は、以後令和 6 年度中に特別徴収される各月分特別徴収 税額から、順次控除されます。

~事業所得者~
令和 6 年度分の個人住民税に係る第 1 期分の納付額から特別控除の額に相当する金額(当 該金額が第 1 期分の納付額を超える場合には、当該第 1 期分の納付額に相当する金額) を控除されます。特別控除の額に相当する金額のうち、上記及びここに定めるところにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、第 2 期分以降の納付額から、順次控 除されます。

以上が当制度の概要となります。今回は要件や支給時期を中心に説明させて頂きましたが、 この他にも従業員からの回収書類や入退社があった際の対応等が定められています。

先ずは要件を確認して頂き、実施の是非を確認して頂くことが良いかと思います。 煩雑な制度であるため判断に悩んだ場合には、最寄りの税理士にご相談頂くことをお勧め致します。

国税庁 HP 定額減税の特設サイト

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西尾 浩希

2020年税理士法人名南経営に入社。
入社より診療所及び歯科診療所、調剤薬局、社会福祉法人の会計・税務顧問業務に従事し、 幅広い種類のクライアントを経験している。また、近年は上記の会計・税務顧問業務以外にも、コンサルタント業務、開業支援業務にも注力している。