安定したクリニック経営のための道しるべ 2023.12.7

安定したクリニック経営のための道しるべ
近年、新規開業クリニックの増加により都心部の内科診療所、歯科診療所を中心に非常に激しい競争を強いられる経営環境となってきております。そのため、これまでのようにクリニックで患者様を待っているだけでは、今後生き残っていくことは困難となってきており、患者様に選ばれるクリニック作りがますます求められるようになってきます。
今回は患者様に選ばれてかかりつけ医に定着するために必要なことについて、マーケティングの神様と呼ばれるフィリップ・コトラー氏の提唱したモデルをもとに考えていきた
いと思います。
クリニックに患者様が新患として来て定着するまでの流れとして、「認知」→「情報探索」
→「代替品の評価(=競合医院との比較)」→「受診決定」→「受診後の評価」に大別することができます。
「認知」とは、「患者様が傷病を認識した」ということになります。例えば、朝起きたら発熱と頭痛がある、転倒して腕に激しい痛みを感じたなどが挙げられます。この点について、
傷病の手当となると特段の対策は難しいですが、自由診療であればホームページや看板、(保険診療で既に来院されている患者様に対しての)院内掲示などで患者様の潜在的なニーズに訴求していくことが有効になることもあります。
「情報探索」とは、言い換えると「受診を検討する医院の候補に入る」ということになります。例えば、この症状は耳鼻科に行けばいいのか内科に行けばいいのかわからない状態などがこの段階になります。一般的に患者様が病気や怪我をした際に受診するクリニックはご自身の経験から得た情報(=かかりつけ医や普段生活の中で得てる情報)もしくは外部からの情報(=インターネットなどでの経験)から受診する医院の候補をあげることとなります。
この段階ではホームページや看板などで受診できる傷病をPRすることが有効になります。
最近ではクリニック名自体に「~内視鏡クリニック」や「~糖尿病内科」のように含めることで訴求するケースも増えてきております。
「競合医院との比較」とは、文字通りですが上記でピックアップした候補の中から受診するクリニックを決定するまでの流れになります。この段階ではホームページの内容の充実、専門医認定による PR(歯科診療所でいえば「か強診」など)、口コミ対策による評価の向上などが有効な対策となります。
「受診決定」から「受診後の評価」は競合医院との競争に勝ち患者様から選ばれてからの段階になります。この段階では競合医院との比較よりも患者様の満足度をいかに高めることができるかが重要となります。この段階がうまくいくかどうかで再診・かかりつけ医へとつなげることができるかが決まってきます。またこの段階で万が一失敗してしまうと悪い口コミへと繋がり上記競合医院のとの比較において悪影響を及ぼすリスクがあるため非常に重要な段階になります。対策としては、待ち時間のストレス軽減(予約システムの導入や待合室での過ごしやすさ向上など)や接遇マナーの向上などがカギとなります。
このように現在の医院経営の課題がどこのフェーズにあるのかによって有効な対策は全く異なります。従って、まずは自院の課題を見極めそれにあった対策をしていくことが重要になります。
なお課題分析に当たっては顧問税理士やコンサルタントなど第三者の客観的な視点を交えて分析していくことをお勧め致します。
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寺田将之

2018年税理士法人名南経営に入社。 診療所及び歯科診療所、調剤薬局等の会計・税務顧問業務に従事。 会計税務にとどまらず、中小企業診断士としての知見や実務経験に基づいた診断助言を行っている。 顧客の考えを整理し、様々な情報と組合せたうえでの最適な方法の提案には定評があり、 特に成長志向の高い顧客層からの支持を得ている また、近年は上記の会計・税務顧問業務以外にも、開業支援業務にも注力している。