電子処方箋導入と補助金 2023.6.28

電子処方箋導入と補助金

ご周知のとおり、電子処方箋は、2023年の1月26日から病院・クリニック・歯科等 の医療機関や薬局で、導入が開始されています。現在は、サービスが始動したばかりという こともあり、また、システムの改修に時間がかかっているため、電子処方箋を利用できる医 療機関は一部にとどまっている状況です。多くの施設が電子処方箋導入の手続きを行って おり、今後徐々に増える見込みです。ただし、患者様側の電子処方箋の利用は、義務化され たわけではなく、現時点では、あくまで医療サービスの一種です。そのため、必ず利用しな ければならないということではありません。従来通りの紙の処方箋か、電子処方箋を選択す ることが可能です。
一方で、2023年4月からは、電子処方箋に必要な「オンライン資格確認」システムの 導入については、医療機関や薬局では義務化される予定です。

電子処方箋とは

電子処方箋とは、これまで紙で発行されていた処方箋をデジタル化し、オンライン上で登録や情報の閲覧、管理等が可能となるものです。電子処方箋は、オンライン資格確認等シス テムを利用し、クラウド上の電子処方箋管理サービスにより、情報共有が行えます。
患者様が電子処方箋を選択したうえで、医師・歯科医師・薬剤師が薬剤情報を参照するこ とに対し、同意をすることで、複数の医療機関・薬局での過去の情報・履歴にもとづいた医 療を受けられるようになります。具体的には、図1の内容ですが、過去 3 年間の薬剤情報と 直近での処方・調剤結果が参照できるようになります。
図1


出典:厚生労働省ホームページ「電子処方箋の概要案内 病院・診療所向け」

電子処方箋導入に対する補助金

厚生労働省は、電子処方箋の導入推進に向けて、電子処方箋を導入するにあたり、必要となるシステム改修費用を一部補助する「医療提供体制設備整備交付金」を実施すると発表しております。
補助対象となるものは、電子処方箋管理サービスを導入する保険医療機関等が、電子処方 箋管理サービスの導入に必要となる IC カードリーダーなどの購入、レセプトコンピュータ ーおよび電子カルテ等の既存システムの改修、電子処方箋の導入にあたっての職員への実 地指導などに係る事業です。申請条件は、オンライン資格確認等システムを運用したうえで、 電子処方箋サービスを利用できるようにシステムの準備が完了していることが条件となり ます。また、補助金申請期間については、令和 5 年 2 月から令和 7 年 3 月 31 日までとなっております。
電子処方箋導入の補助金については、当初、令和5年 3 月 31 日までに導入した場合に適 用される補助率は高く、令和 5 年 4 月 1 日以降に導入した場合の補助率は前者に比べ低く なっておりましたが、令和 5 年度予算案(2022 年 12 月 23 日政府閣議決定)にも補助金が 組み込まれたことにより、補助率が継続されるようです。詳細は以下の通りです。

出典:医療機関等向けポータルサイト

最後に

電子処方箋の導入は、国が推進している改革の一つです。「データヘルス改革」と呼ばれ、
ICT を活用した健康管理・診療サービスの提供や、健康・医療・介護領域のデータを集約し たプラットフォームを構築していくものです。データヘルス改革推進本部が設けられ、国民 の健康寿命の延伸と効果的かつ効率的な医療・介護サービスを提供する政策が掲げられま した。この取組の一つが電子処方箋であり、電子処方箋が運用されることにより、「医療 DX」 がさらに進むことが予想されます。
電子処方箋導入、補助金の申請等につきましては、社会保険料診療報酬支払基金情報化企 画部・情報化支援部・医療機関等向けポータルサイト、オンライン資格確認等コールセンタ ーや専門家にご相談されることをお勧めいたします。

  • 病院・診療所・介護施設の経営変革をここから

松村 隆史

2019年税理士法人名南経営に入社。 入社以前より個人・法人含め、病院、診療所、歯科医院等を主に担当しており、医療機関の新規開業、医療法人設立、会計、税務顧問業務に従事してきている。現在は、税務及び経営指導・相談業務を行う傍ら、診療所の開業支援業務を中心として、新規開業にも携わっている。