オンライン資格確認の原則義務化と今後の動き 2022.10.7

オンライン資格確認の原則義務化と今後の動き

8月10日の中央社会保険医療協議会 総会(第527回)において、令和5年4月から保険医療機関・薬局にオンライン資格確認等システムの導入が原則義務化されることが決定されました。そこで今回はオンライン資格確認の医療機関における現状についてみていきたいと思います。

オンライン資格確認の導入状況

厚生労働省が公表しているオンライン資格確認の参加率(※1)は8月21日時点(※2)で全国平均は27.2%、区分ごとでみると病院で43.6%、医科診療所で18.3%、歯科診療所で19.1%、薬局で47.3%と依然として低い導入状況となっております。
(参考:厚労省「オンライン資格確認の都道府県別導入状況について」より)
参加率が低い要因としては、患者側のマイナンバーカード利用率も低く、設置しても実際利用される患者がほとんどいないこと、補助金の終了が迫ってきて医療機関から業者への依頼が集中しており、設置完了までに時間がかかるケースが起きていることなどがあげられるようです。
※1 「運用機関数」を「医療機関等数)」で除したもの
※2 記事執筆時点で公表されている最新データ

導入にあたっての補助

オンライン資格確認の導入にあたっては以下のように補助金が出されております。

・顔認証カードリーダーを令和3年3月31日までに申請(加速化プラン対象)

病院(顔認証付きカードリーダを1台申請) 補助限度額は210.1万円まで
病院(顔認証付きカードリーダを2台申請) 補助限度額は200.2万円まで
病院(顔認証付きカードリーダを3台申請) 補助限度額は190.3万円まで
大型チェーン薬局 補助限度額は 42.9万円まで
診療所又は大型チェーン薬局以外の薬局 補助限度額は 42.9万円まで

・顔認証カードリーダーを令和3年4月1日以降に申請(加速化プラン対象外)
【補助金対象に係る総事業費×補助率】と補助限度額を比較して少ない額を交付額とする。 

病院(顔認証付きカードリーダを1台申請) 補助率1/2 補助限度額は105万円まで
病院(顔認証付きカードリーダを2台申請) 補助率1/2 補助限度額は100.1万円まで
病院(顔認証付きカードリーダを3台申請) 補助率1/2 補助限度額は95.1万円まで
大型チェーン薬局 補助率1/2 補助限度額は21.4万円まで
診察所又は大型チェーン薬局以外の薬局 補助率3/4 補助限度額は32.1万円まで

(出典:「オンライン資格確認・医療情報化支援基金関係医療機関等向けポータルサイト」より)
令和5年3月31日まで補助対象事業を完了させ、令和5年6月30日までに申請することが必要となりますので、スケジューリングにご注意のうえご検討ください。
詳細については下記【参考資料】記載の医療機関等向けポータルサイトのHPにまとまっていますのでそちらもご参照ください。

診療報酬への影響

 原則義務化の公表とあわせて以下のような改定が公表されています。
 【廃止】
 ・電子的保健医療情報活用加算が廃止
  ※【医科・歯科】 マイナ保険証を利用する場合 7点(初診)4点(再診)/
利用しない場合 3点(初診)
  ※【調剤】 マイナ保険証を利用する場合 3点(月1回)/ 利用しない場合 1点
(3月に1回)
 【新設】
・医療情報・システム基盤整備体制充実加算の新設(R4.10~)
  1 施設基準を満たす医療機関で初診を行った場合 4点(調剤は3点 (6月に1回))
  2 1であって、オンライン資格確認等により情報を取得等した場合 2点
    (調剤は1点(6月に1回))
 令和4年10月から変更となりますのでご注意ください。

今後の動き

今回のオンライン資格確認の義務化は今後の医療DX推進の足掛かりとして位置付けられています。次の段階として令和4年7月からは電子処方箋についての概要や促進策が徐々に公表されてきています。こちらについても順次詳細が発表されていくと予想されますので今後の動向を注視しながら対応方法について意思決定していく必要が出てくるかと思います。詳細については下記参考資料記載の厚生労働省のHPを参照ください。

まとめ

オンライン資格確認の導入率は低い状況が続いており、実際私共のお客様でも2,3か月に1名利用者がいれば良い方という声をよく伺います。しかしながら、DXが医療の世界にも
広がる中で、今回義務化され対応を求められていくことになりました。まだ、導入がお済みでない医療機関は、補助金の活用も検討しながら早めの導入の検討を進めていくことをお勧め致します。また電子処方箋などをはじめとして今後も医療業界においてもDXが加速していく流れにあると予想されますので、今後の動向も注意が必要です。
【参考資料】
オンライン資格確認・医療情報化支援基金関係 医療機関等向けポータルサイト
厚生労働省 電子処方箋

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寺田将之

2018年税理士法人名南経営に入社。 診療所及び歯科診療所、調剤薬局等の会計・税務顧問業務に従事。 会計税務にとどまらず、中小企業診断士としての知見や実務経験に基づいた診断助言を行っている。 顧客の考えを整理し、様々な情報と組合せたうえでの最適な方法の提案には定評があり、 特に成長志向の高い顧客層からの支持を得ている また、近年は上記の会計・税務顧問業務以外にも、開業支援業務にも注力している。