医療機関のコスト削減までの道筋 2022.9.7

医療機関のコスト削減までの道筋

昨今、新型コロナウイルスの感染拡大により、資金繰りが危うくなる医療機関も増えてきています。そのような中で少しでも利益を確保しようと、様々なコスト削減を図る医療機関もありますが、その試行錯誤が全て良い結果に結びつくとは限りません。そのコストの実態を把握せず、むやみやたらにコストカットして、逆に減収減益となった医療機関も少なくありません。
今回は、正しい理解のもと、コストを削減してしっかりと利益確保に繋げるための考え方を示していきます。

医療機関のコスト構造

コスト削減を考える前に、その構造がどういったものかを見ていきます。
医療機関におけるコスト構造は一般的に下のような図になります。

医薬品費や医療材料費等のいわゆる原価および委託費の中でも検査委託費に関しては、患者数や売上に応じて変化するため変動費とされます。対して、患者数や売上の変化に関係なく、一定費用となる固定費には、人件費および減価償却費やリース料、賃料などの設備費、そしてその他の経費が含まれます。
先ず、これら変動費と固定費によって、それぞれコスト削減までのその方法が変わってきます。変動費は、単純にその費用を下げると収入や患者数にも直接影響してくるものであるため、医薬品の個々の仕入単価に着目し、その医療行為における使用量を調整するなどして、部分的なコスト削減を図ることとなります。固定費の場合は、水道光熱費や通信料などの比較的にコスト削減を検討しやすいものと、人件費や設備費などの安易に削減できないものに分かれます。前者の場合は、仮に削減できた場合は長期的なコスト削減に繋がり、後者の場合は、仮に削減できた場合は比較的に早い段階でそのコスト削減の実感を得ることが出来ます。
①変動費
変動費についてさらに細かく整理すると下記の図のようになります。

対価、つまり収入が発生するかしないかで変動費削減の考え方は変わってきます。
対価の発生しない費用については、その医薬品の使用量や種類、仕入単価のいずれを削減してもそのままコスト削減に繋がります。診療や治療に問題が生じない範囲で、という点に注意が必要ですが、あらゆる角度から課題解決を検討できるでしょう。
対して、対価の発生する費用については、その一つ一つの原価が収入に結び付いているため、先ずはそれら個々の粗利益を計算する必要があります。そして、医薬品量や検査数を調整することがコスト削減及び利益増に繋がるのかどうかを慎重に見極めていくことが肝心となります。

②固定費
固定費の中でも人件費は、いずれの医療機関においても大きな費用項目の一つかと思いますが、その扱いには注意が必要です。人件費は、医療行為の現場や患者対応に直接関り合って患者数や収入の変動に紐づく直接人件費と、上記とは直接的な関わり合いのない間接人件費に分けることが出来ます。
・直接人件費:医師、看護師等
間接人件費:総務、経理、医事課職員、企画職員等

<直接人件費のコスト削減>
直接人件費のコストについて考える際は、その人員と直接結びついている収入や患者数を含めて包括的に検討していく必要があります。例えば、医師一人が減ると同時にその医師が担当していたはずの診察や手術の件数も減り、また、その医師を慕っていた患者も離れていく場合もあり、医師一人分の人件費削減と同時に収入が大きく落ちる恐れがあります。看護師に至っては、その数はあらゆる診療報酬算定のための施設基準を満たす要件にもなっており、むやみに削減には踏み切れないケースが少なくありません。
そのため、人員一人当たりの労働生産性を考慮に入れながら、人員一人当たりの業務効率や収入の向上、はたまた、患者一人に対して対応する人員を減らすなどして人件費率を落とす、といった観点で考えていくことが大事となります。

間接人件費のコスト削減>
間接人件費は、その職制ゆえに、直接人件費とは異なり、人員とその人員がもたらす売上や患者数とが結びついていません。そのため、人員一人当たりの労働生産性を考慮する、という考え方が当てはまらない職制の人員も存在し、なかなかコスト削減への切り口が見つからないことが多いです。
それでも、その現場においては、人員が及ぼす付加価値と人員に与える給与の見合いを検討していくことは可能かと思われます。

<設備費のコスト削減>
次に設備費ですが、設備費は大きく減価償却費、リース料、賃借料、保守料等に分けることが出来ます。

 
減価償却費は、過去に取得した固定資産の取得価額を一定のルールのもとで分割して毎年、費用計上しているものです。試算表上の数字の動きのみで実際に現預金が動いているわけではないので、直接的なコスト削減という観点にはそぐわないものになります。仮にこの減価償却費を削減しようとするならば、今後の設備投資計画を見直すところからスタートすることになるでしょう。
リース料は過去に取得した固定資産に一定の料率をかけて契約期間に渡って支払い義務が生じるものです。この契約を見直してリース料削減、というのは些か現実的ではありませんので、仮にこれを削減しようとするならば、減価償却費と同じように今後の設備投資計画を見直すところからスタートすることになります。
上記2種に対して、賃借料や保守料等はまだコスト削減の余地を含んでいます。駐車場や社員寮の賃借のために発生する賃借料については、その賃借物件の活用方法や賃借状況を見極めた上で、貸主と減額交渉を行いコスト削減を図ります。保守料等は、その保守契約の内容を先ずは確認しましょう。定期検査から修理部品交換までを包括した契約のものや、メンテナンスにかかった金額だけを支払う契約のものまで、多くの契約パターンが存在します。そのため、例えば、不具合が多い内視鏡やCTなどは包括契約で進め、故障が少ないX線や心電計などは必要最低限の契約に留めるなどの工夫をすることでコスト削減を図ることが可能です。

終わりに・・・
ひとえにコスト削減による改善と言っても、その改善に至るまでには入念な事前検討が必要になります。上記に示したような考え方が基本的な道筋にはなりますが、どの切り口が一番適切なコスト削減方法なのかは、その現場環境によって大きく変わってきます。その現場をよく理解していることが大前提になりますので、それを踏まえて、会計士や税理士などの専門家と一緒に検討を重ねていくことを強くおすすめ致します。

(参考)医業経営を“最適化”させる38メソッド 機能選択・経営マネジメント・診療報酬の最適化マニュアル
    著者:小松大介 株式会社メディヴァ 取締役 コンサルティング事業部長
    発行者:小野章
    発行所:医学通信社
    2017年11月28日 第1版第1刷発行
    2021年4月5日  第2版第1刷発行

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このコラムの執筆者:早水 僚一