開業前後の診療所経営とマネジメント(増収・増患編)

2018年12月5日

開業前の先生の不安材料は何か。
百件を超えるクリニックの開業を支援してきましたが、開業前先生方の一番多い不安材料は‘患者さんの動向’です。つまり「患者さんに来てもらえるだろうか」という点。

次に開業の手続きや準備に関する事項で「開業資金はどうやって借りられるのだろうか」「開業準備は何から始めたらいいのだろうか」の心配から「スタッフの集め方はどうしたらいいのかな、雇用の方法はどうしたらいいのか」等の‘職員問題’という心配が続きます。

さらに「開業したら医療監査は来るのだろうか、個別指導はあるのだろうか」という行政関連の不安が。
そして「経営者となるがどうやって運営したらいいのだろか」や「今の自分の実力(レベル)で運営は大丈夫だろうか」等のクリニック経営(運営)についての不安材料が続くようです。

開業後の先生方の不安材料は何か。
では、開業後の先生方の不安(悩み)はどうなるかというと、一番多いのは‘職員問題’です。
「思うように動いてくれない」「自分の主張ばかりしてくる」等、雇用したスタッフに対する悩みが多くなるようです。
その次に「思った以上に患者さんがこない」「患者数が伸びないので収入が増えない」等、‘患者さんの動向’と続きます。

増収・増患対策

開業後の先生の悩みは従業員の問題だけでなく、‘患者さんの動向’も気になるところです。
「思った以上に患者さんがこない」「患者数が伸びないので収入が増えないなどの悩みが出ています。
今回は、開業当初の増収対策や増患対策についてお話しします。増収対策としては、自医院の『点数の分析』、増患対策としては『患者の分析』が考えられます。

増収対策

増収対策としては、まず自クリニックの点数分析を行い、他の同診療科のクリニックの点数と比較して、何が足らないのかを知り改善することです。
レセプトコンピュータで収入分析ができます。診療行為ごとの分析も可能ですので、検査や処置、画像等の診療行為別ごとに自クリニックと他クリニックとの平均値などの増減を確認しておくとよいでしょう。
ここで、院長に必要なのは『情報収集』です。院長は今までは病院等に雇用されていましたが、今後は経営者です。
様々な情報に耳を傾けること、すなわち素直に聞くことが重要となります。情報は多くあるに越したことはありません。

増患対策

増患対策に必要なのは『患者分析』です。レセプトコンピュータで得られた全体の数値を活用することになります。『患者分析』の内容は以下のようになります。
1.患者数の推移[経営指標のポイント]
2.新患者数と再診患者数
3.患者分析[ターゲットの絞込み]・地域別・保険別・年齢別・疾病別・曜日別・男女別・
時間別・etc 
4.診療圏分析の再確認・再実施[シェア率]
5.患者アンケートの実施(開業1年後には行なう)

患者分析

上記の『患者分析』の中でポイントなるのが「ターゲットの絞り込み」です。
‘場所’‘時間’‘休日’‘性別’‘年齢’等々、どの分野に絞り込みをするかを検討します。
開業前には「診療圏調査」を行なっていると思いますが、予想していたシェア率等をレセプトコンピュータで得られた数字と比較し、その違いは何かを認識し改善につなげていきます。その後、ターゲットとなる患者の周知・認知方法、つまり広告の出し方を見直しすることが必要です。

広告及びPR方法

広告可能な項目{広告規制(医療法第69条)}は、以下の通りです。
・医師又は歯科医師である旨
・医師法に定められた診療科名
・病院又は診療所の名称、電話番号、住所など
・診療日又は診療時間
・入院設備の有無
・療養型病床の有無
・紹介可能な病院の名称 等々

広告規制があるので、広告できる項目を知っておく必要があります。

PR方法

①新聞への折込みチラシについて、メリットは確実に診療圏内への認知ができます。
注意として、チラシの多い金曜日と土曜日は避けます。日曜日にチラシを撒くと家族に相談がすぐでき有効であると思います。
②駅看板については、広告への書込量が多いことです。他医院との違いを明確にでき、目立つ工夫が必要です。
場所によっては医療機関だらけです。特色を出すようにしましょう。
③電柱看板について、メリットは道案内の役目です。ただ定期的なメンテナンスが必要です。
街路樹が隠してしまう場合があるので定期的に見直しをしましょう。
④野立て看板について、遠方からの道案内に役立ちます。車社会には適しており有効でしょう。ただ、コストが若干高いと思われます。
⑤開業の挨拶状について、メリットは直接顔を知っている人へアプローチができます。
⑥内覧会/開院パーティについて、メリットは地域の患者予備軍の方に院長の顔を直接見てもらうことができます。これは親近感がわくことになります。案内状は町内会、老人会、婦人会、子供会などに持って行き、来院者に記念品なども用意しておくと良いでしょう。パンフレットも多めに用意しておくことです。ただ、費用や人出がかかります。
⑦ホームページについて、昨年の医療法改正前までは、広告規制の対象外というメリットがありました。若干規制はありますが規制に注意して開業前から作っておくことです。
看護師等の募集に積極的に活用します。年々患者さんはホームページを見てくる人が多くなっています。
⑧その他、ロゴの作成によりイメージや印象を浸透させます。
電話帳は口コミの情報が伝わりにくい診療科に有効であると思います。(精神科や心療内科、婦人科、泌尿器科、不妊治療等)意外と見ている人が多い。恥ずかしがり屋が多いのでしょうか。

診療日時の設定

診療する曜日、時間については、次のいくつかの点を考慮して決定します。
夜間人口の多い地域(住宅街)、昼間人口の多い地域(ビジネス街)、診療科からみた時間帯、休日の設定方法です。
つまり患者の視点で考える、ということです。
患者が来院したい日時を考えて休診日や診療時間を決めることになります。
①夜間人口の多い地域では、お年寄りや主婦層が多いので、午前9時から12時、午後3時から6時などの地域と考えられますが、サラリーマンの帰宅時間に合わせ、遅い時間ま
で診療時間とすることも検討します。
②昼間人口の多い地域では、働いているサラリーマンが多いことやテナントが多いことが考えられ、午前10時から午後1時位までの昼休み時間や、午後5時から8時位までの就
業時間後の時間帯を検討します。
③診療科からみた時間帯について、婦人科(不妊)や精神科などは会社帰りの人が対象になり遅くまでの診療時間を考慮しますが、整形外科などはお年寄りが多いと思われるので早朝から診療するなど検討します。
④休日の設定については、ビジネス街は周りの会社の休日に合わせ休診日を設定し、住宅街は土日が普通休みであり同じように休診日にしたいのですが、逆に土日診療日とすることも利用価値があります。ただし、土日はスタッフ集まりにくいというデメリットがあります。
競合面からは、水、木の休みをずらす工夫も必要です。

患者目線での休診日や診療時間を設定することをまず考えましょう。

萩原英司

税理士法人名南経営 会計部 営業推進担当
株式会社名南ビジネスマッチング 代表取締役

1984年税理士法人名南経営に入社。
会計コンサルティング部マネージャー、統括マネージャーを経て、2015年より営業推進室 室長に着任、現在に至る。昨今では、病院、診療所、歯科診療所、薬局など医療関連施設の新規開業支援、経営支援、スタッフ教育研修、セミナー等に携わる。当社のクライアント向けセミナーのほか、地域の医師会(地区医師会、歯科医師会)及び薬剤師会への講演実績も多数。