所得拡大促進税制の改組:医療機関、介護施設の実態に則して

2018年10月22日
所得拡大促進税制が平成30年の税制改正において改組されました。
医療機関は資本金が大きいところが少なく、個人事業の方も多いので、ほぼ税務上は中小企業に該当することが多いといえるでしょう。
まず、従前の制度と比較してみしょう(中小企業者の場合)
  改正前 改正後
要件

平成29年度の要件

  • 給与支給額が基準年度より3%以上UP
  • 雇用者給与支給額が前年より増加
  • 継続雇用者の平均給与が前年度を超えて増加
継続雇用者支給額が前年度比1.5%増加
※継続雇用者の判定が容易に
※前年度より給与が減少していないこと(増加が「0」以下を除く)
控除額(いずれも法人税額の20%が上限) 基準年度からの増減額で計算
原則:基準年度からの増加額10%
加算:増加額が一定割合以上である場合には上乗せ措置あり
  • 継続雇用者支給額が1.5%以上増加の場合
    「前事業年度からの増加額×15%」
  • 2.5%以上増加かつ教育訓練費等要件を満たす場合
    「前事業年度からの増加額×25%(10%上乗せ)

ポイントとしては

  • 控除額の計算の変更
    基準年度からの増加額だったものについて、前事業年度からの増加額により計算
    するようになったため、基準年度からの増加が大きかった医療機関様については控除額が減少する可能性もあります。
  • 継続雇用者の範囲の見直し
    「期間内の各月において一般被保険者として給与の支給があった者」を抽出し、該当者に係る前期及び当期の給与総額を比較すればよくなった。
  • 教育訓練費等要件
    上乗せ措置を獲得するためには「前事業年度と比較して10%以上の教育訓練費が増加していることまたは「経営力向上計画の認定、行われたことにつき証明がされていることがあげられます。
これらは平成30年4月1日以後開始事業年度から適用(個人事業の方は平成31年分より)され決算期変更などの特殊の事情がある場合を除いて、最初に新制度適用がある法人様は平成31年3月決算からとなります。
医療機関、介護施設様におかれましては昨今の賃金の増加、施設基準をクリアするための人員の増加、まわりのライバルに対抗するための待遇の改善など賃金について考える機会も増えてきていると思われます。
賃上げは国策でもあり中小企業庁などのホームページにもパンフレットが公開されていますので、参考にしていただければと思います。
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html
(中小企業庁HP)
特に教育訓練費等要件については、医療機関様においては積極的に経営力向上計画の認定を取りに行くケースも一般企業に比べて少ないと考えられるため、決算間際になって検討した結果、教育訓練費要件を満たせないなどならないように、ある程度見込みを立てて教育計画、研修計画などを立案する必要があります。またこれを機に経営力向上計画の認定を検討されることも手段の一つとしては考えられるかもしれません。

大久保聖

税理士法人名南経営 会計部 営業推進担当

2006年税理士法人名南経営に入社。
入社から現在まで一貫して医科、歯科のクライアントを専任で担当している。歯科医院専属部署(歯科プロジェクト)において150件ほどの歯科医院と接触。その後は、医科を含めた医療顧客全般の税務顧問業務を行いながら、クライアント目線に立った財務指導に注力。現在は、多数の実務経験を活かした医科・歯科業界特有の経営課題対応や現場を理解した税務・財務相談を医療機関クライアントに提供している。