医療法人と個人事業における税金の違いについて 2018.8.27

最近は基金型法人が相続対策などの視点から見直され、医療法人設立に向けて動かれている先生も多いかと思います。
今回は医療法人と個人事業の税金の違いについてお話したいと思います。
課される税金は
医療法人・・・・・法人税
個人事業・・・・・所得税
がそれぞれ課されます。
法人と個人は人格が違うため、医療法人を経営されている、される先生はそれぞれ事業活動と生活を別で考えます。医療法人から給与をもらいそれで生活をするということで、言い換えれば医療法人は一切生活の概念がない、ということになります。
一方個人事業は診療所を経営する行為と生活する人を同一の区分で考えます。そのため生活と事業を切り離すことができず不可分一体の支出が生じたりするため、所得計算において、それらに対する一定のルールが定められています。
同じ事業から生じる所得(もうけ)ではありますが、課税根拠となる法令が違うため様々な相違点があります。
代表的なものを列挙すると以下の通りです。
法人の場合・・・・・・最大で約30%程度の税率(所得や自費診療の状況で変動あり)
個人が受け取る給与は住民税含めての最大55%の累進税率(所得税)
個人事業の場合・・・・最大で住民税含めて55%の累進税率
ex.生命保険料
法人の場合・・・・・・法人契約、法人受取とすれば法人の経営上の保障とされ、損金計上可能。
個人事業の場合・・・・家事関連費とされ認められない。代わりに生命保険料控除がある。金額的には極めて僅少。
あくまで一例ですが、上記のように法人であれば費用として認められるが、個人では認められないものが多いです。(もちろん逆のパターンもあります。)
法人の場合・・・・適正相場であれば認められる
個人事業の場合・・・・専従者給与を除き、各人の収入、必要経費にならない
法人の場合・・・・・費用が否認され、かつ給与扱い(ダブルパンチ)で課税(誰が給与扱いで課税されるかは状況により異なる)
個人事業の場合・・・経費が否認されるのみ
法人の場合・・・・・適正額であれば退職金として認められる。
個人事業の場合・・・事業主に退職の概念がないため、退職金はない。
(専従者への退職金もは上記3での専従者給与以外の支出となるため、認められない)
ex.交際費の場合
法人の場合・・・・・医療法人の場合、一定要件に該当すると損金とならない
個人事業の場合・・・金額に上限はない。
(多額の交際費は内容そのものが否定される可能性はあります。)
上記のものはあくまで一例ですが、上記のように法人と個人では取り扱いがかなり異なります。
また、税計算以外にも実際の資金繰りなども変わってまいりますので、それらを総合勘案したうえで意思決定をする必要があります。
弊社の顧問サービス、コンサルティングサービスでは様々な相談に対応させていただくことが可能です。ぜひご検討ください。

加藤尚孝
税理士法人名南経営 理事
株式会社名南メディケアコンサルティング 本部長
1994年税理士法人名南経営に入社。 医療機関・薬局を専門とした税務顧問担当者として顧客の税務及び経営指導業務を行う傍ら、診療所の開業支援業務を中心に顧客創造活動に携わる。その後、豊田事務所長、三河本部長を経て2011年より理事に就任、現在に至る。また、2016年からは医療介護部門の統括責任者として当社の経営の根幹を担うとともに、現在も税務・経営指導を行うなど幅広く活動している。