医療機関の設備投資に伴う優遇税制 2026.4.21
昨今の物価上昇が著しい中、設備投資の負担が大きく苦労されている医療機関様が多いのではないでしょうか。
設備投資関係の優遇税制について医療機関様は一般法人様と比べますと利用できるものが少なくはなりますが、利用できる可能性の優遇税制についていくつかご紹介させていただきたく思います。
①医療用機器等の特別償却
医療用機器等については、青色申告書を提出する事業者であるほか、一定の要件を満たすことで特別償却(初年度のみ通常の減価償却に割増で償却)する方法が認められます。
通常の資産であれば耐用年数に則って減価償却(費用化)することになりますが、取得時に割増で減価償却費を計上できることになります。
割増償却となるため、将来計上できる減価償却費を前倒しで費用化する方法になります。
当制度には下記の表の通り3種類の制度があります。
| 特別償却制度 | 特別償却割合 | 対象設備等 |
|---|---|---|
| 高度先進な医療用機器に係る特別償却制度 | 12% | 取得価額500万円以上で高度な医療の提供に資するものとして指定を受けたもの等または薬機法の指定を受けてから2年以内の医療機器 |
| 医師及びその他の医療従事者の勤務時間の短縮等に資する機器等の特別償却制度 | 15% | 医療機関が医療勤務環境改善支援センター等の都道府県の機関の助言を受けて作成した医師及び医療従事者の勤務時間を短縮する計画に基づき取得した器具及び備品(医療用の機械及び装置を含む。)並びにソフトウェアのうち取得価額40万円以上のもの |
| 地域医療構想の実現のための病床再編等の促進のための特別償却制度 | 8% | 病床再編等のために取得または建設された病院または診療所用の建物及びその付属設備 |
実例として多いものは上段の高度先進な医療用機器等に係る特別償却制度になります。
いずれの制度であっても単純に金額要件だけでなく今回記載しきれない細かい要件もありますので、機器等を購入される前に税理士や購入元メーカー等に確認していただくことをおすすめいたします。
②中小企業投資促進税制
本税制は一定の要件の設備投資を行うことで適用可能になる税制になります。
対象となる事業者は青色申告書を提出する事業者で下記の通りです。
Ⓐ 中小企業者等(資本金または出資金1億円以下の法人、農業協同組合等)
Ⓑ 中小事業者(従業員1,000人以下の個人事業主、持分無し医療法人)
本税制は医療機関様では対象となる資産がほとんどないかとは思いますが、今回は医療機関様が関係のある電子カルテやレセコンといったソフトウェアについて紹介いたします。
ソフトウェアについては、「一の取得価額が70万円以上または取得価額の合計額70万円以上のもの」が対象になります。
該当資産を購入された場合は取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除(資本金または出資金3,000万円超の法人は対象外)が可能になります。
電子カルテやレセコンといったソフトウェアを購入される際は税理士にご相談いただくことをおすすめいたします。
③中小企業経営強化税制
本税制については、上記②の中小企業投資促進税制と似ておりますが、設備投資の際に一定の手続きを行う必要がある税制になります。
対象事業者は投資促進税制と同様になります。
適用を受けるためにはⒶ生産性向上設備(A類型)、Ⓑ収益力強化設備(B類型)、Ⓒ経営資源集約化設備(D類型)、Ⓓ経営規模拡大設備等(E類型)を導入して実施する経営力向上計画の認定を事前に受けることが必要になります。
本税制も対象設備はいくつかありますが、医療機関様に関係があるソフトウェア及び医療機器を除く器具備品について紹介いたします。
ソフトウェアについては「一の取得価額が70万円以上のものまたは取得価額の合計額が70万円以上のもの」が対象になります。
器具備品については「1台または1基の取得価額が40万円以上のもの」が対象になります。
ただし、上記にも記載の通り「医療機器を除く」器具備品となるので注意が必要になります。
器具備品については、電話設備やパソコンといった資産が対象となります。
必要な手続きを済ませた上で対象資産を取得した場合は即時償却(取得価額の100%を費用化)または10%の税額控除(資本金または出資金3,000万円超の法人は7%)が適用可能になります。
②及び③の税制を簡易的に表にまとめると下記の通りになります。
| 税制 | 対象事業者 | 優遇内容 | 対象設備及び要件等 |
|---|---|---|---|
| 中小企業投資促進税制 | ①青色申告書を提出している事業者 ②中小企業者等(資本金等1億円以下の法人、農業協同組合等) ③中小事業者(従業員1,000人未満の個人事業主、持分無し医療法人) |
取得価額×30%の特別償却 または 7%の税額控除 (資本金等3,000万円超の事業者は除く) |
ソフトウェア:一の取得価額または取得価額の合計額が70万円以上 |
| 中小企業経営強化税制 | 即時償却(取得価額の100%償却) または 10%の税額控除 (資本金等3,000万円超の事業者は7%) |
ソフトウェア:一の取得価額または取得価額の合計額が70万円以上 器具備品:1台又は1基の取得価額が40万円以上 ※ただし、Ⓐ生産性向上設備(A類型)、Ⓑ収益力強化設備(B類型)、Ⓒ経営資源集約化設備(D類型)、Ⓓ経営規模拡大設備等(E類型)を導入して実施する経営力向上計画の認定を受けることが必要 |
どちらの税制についても当コラムでは書ききれていない内容がございますので適用の検討をされる際は税理士にご相談の上、税制の適用について検討いただければと思います。
まとめ
今回は医療機関様が利用可能となるいくつかの税制についてご紹介させていただきました。
各税制の中でも記載させていただきましたが、各税制については事前に確認が必要なものも多くございますので、設備投資の際は税理士にご相談いただければと思います。

大竹 英仁
2021年税理士法人名南経営に入社。
名古屋市立大学経済学部卒業。医療機関及び一般中小企業の会計・税務顧問業務に従事。


